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2024.09.13

『大邱地下鉄火災』の現場を訪ねて火災への備えを考える

  • 防災コラム

韓国の地下空間では乗客救護用品収納箱など、火災に対する設備が充実しています。その契機となった大邱地下鉄火災の現場を訪問しました。

2.18大邱地下鉄火災惨事記憶空間

Stock-Stockでは、地震だけでなく火災に対する防災用品も取り扱っています。火災で一番恐ろしいのは一酸化炭素中毒です。火災時に発生する煙や有毒ガスの中でも窒息せずに15分間呼吸できる救命タオル「救煙くん」をおすすめしています。

火災避難用救命タオル 救煙くん

「救煙くん」は韓国で開発された製品です。私は以前から韓国の地下鉄で見た“乗客救護用品収納箱“が気になっていました。

“乗客救護用品収納箱“や“救命タオル”が数メートルおきに消火器と一緒に必ず設置されているのです。どうして韓国では、こんなに沢山の火災対策がされているのか?と疑問に思いました。

調べてみると、韓国の火災対策のキッカケとなったのが『大邱地下鉄火災』だということを知り、夏季休暇を使って現地(大邸)に私の疑問を解きに行きました。火災の跡地や遺物が教えてくれることや、火災から20年経った今の大邸の事も少し紹介します。

『大邱地下鉄火災』とは

Daegu subway fire
大邱地下鉄火災
チョークモ, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

2003年2月18日9時53分頃、大邸広域市地下鉄公社(当時)1号線の中央路駅構内地下3階のホームに到着した第1079列車(1000系118編成)の車内で、男性がペットボトルの中に入ったガソリンを撒いて火災となった放火事件です。乗客など192人の方が亡くなり148人の方が負傷する大惨事となりました。

この火災では、火災発生時における運行管理や防災管理、乗務員の対応や避難誘導などに大きな不手際があったことから甚大な人的被害を出すに至りました。

火災の記憶を風化させないために当時のまま保存した“2.18大邱地下鉄火災惨事記憶空間”

2.18大邱地下鉄火災惨事記憶空間
中央路駅構内の2.18大邱地下鉄火災惨事記憶空間

私は最初に、大邸の中央路駅にある“2.18大邱地下鉄火災惨事記憶空間”を訪ねました。

場所は、地下鉄1号線中央路駅の構内、3・4番出口側の改札の手前で誰でも入ることができます。足元の「2.18대구지하철 화재 참사 기억공간」と書かれた金色のプレートの先、オレンジ色の壁の内側には当時のままの現場が保管されています。

火災によって燃えたATMや血圧計、コインロッカー、公衆電話などの遺物。壁にはご遺族や当時の市民が書いたメッセージ。 事故当時の時系列の状況などの説明や事故を教訓に設置された対策なども展示されています。

犠牲になられた192人のお名前が書かれた追慕壁には献花台が設けられており、手書きのメッセージがそっと置かれていました。

外には、煤だらけになった乗客の持ち物や写真、事故後の安全キャンペーン資料など展示され、教訓を生かした人命救助用の消火器や防塵マスク、水が入った“乗客救護用品収納箱“や“救命タオル”も設置されていました。

中央路駅は、大邱の繁華街は東城路の中心にある駅です。現在も多くの人が利用する駅であり、事故当時も多くの人の喜怒哀楽が通り過ぎていた場所であろうと思います。そんな日常が一瞬にして壊されてしまうのが火災なのでと改めて感じさせる空間でした。

大邱市民安全テーマパーク

市民安全テーマパークの大邱地下鉄火災保存車両

「2.18大邱地下鉄火災惨事記憶空間」の次にバスに乗って「大邱市民安全テーマパーク」を訪問しました。

“大邱市民安全テーマパーク”は、中央路駅で発生した“大邱地下鉄火災”を教訓として、市民に安全と防災意識を高めてもらうために開設されました。

火災に遭った車両が展示されており、予約制ですが火災が発生した地下鉄からの避難体験もできます。避難体験に参加すると被災した地下鉄車両を近くで見ることができます。

大邱市 市民安全テーマパーク

私は体験に参加できなかったため、歴史の展示室から地下鉄車両を見学させていただきましたが、真っ黒でかろうじて形だけとなった車両が地下鉄での火災の恐ろしさを伝え続けています。

しかし怖いばかりではなく、前向きな展示も多く、子どもたちが楽しめる遊び場や広々とした敷地は心をリラックスさせてくれるので良い組み合わせの施設だなと感じました。


最初の疑問の答え

ソウルの地下ショッピングセンターの災害対策用品保管庫

どうして韓国では、“乗客救護用品収納箱“や“救命タオル”など沢山の火災対策がされているのか?
その答えの1つに「大邱地下鉄火災」があるのだということ。

悲しく悲惨な火災から目を逸らさず、何をすれば良かったか?何があれば良かったか?を考えた結果が、“乗客救護用品収納箱“や“救命タオル”の設置やステンレス製の車両の座席なのかなと思いました。

大邸はどんな街?

STARBUCKS COFFEE 大邱鐘路古宅店

大邱広域市はソウル特別市、釜山広域市に次ぐ韓国第3の都市と言われています。夏は韓国で1番暑い都市として有名です。美男美女の街とも呼ばれBTSのSUGAやV、SEVENTEENのS.COUPS、「愛の不時着」で有名なソン・イェジンの出身地です。

大邱市はフライドチキンで有名な街で毎年、チキンとビールを楽しむお祭り「大邱チメクフェスティバル」が開催されています。2013年に始まったお祭りは年々成長し、10年以上続くイベントに成長。大邱の地域イベントを超え、韓国の夏を代表するお祭りになっています。

最近では築100年の韓屋をリフォームした「STARBUCKS COFFEE 大邱鐘路古宅店」(대구광역시 중구 종로2가 58)が話題となっていて人気の観光スポットになっています。
他にも名物の「ぺたんこ餃子(ナッチャッマンドゥ)」なども楽しめます。

まとめ

まず最初に、大邱地下鉄火災で亡くなられた方々に心よりご冥福をお祈り申し上げます。
大邱地下鉄火災の事を調べていると本当に心が痛くなる内容でした。このような火災が世界の何処においても二度と起きない事を願うばかりです。

中央路駅の乗客救護用品収納箱
中央路駅の乗客救護用品収納箱

『大邱地下鉄火災』を教訓にして、火災に対しての備えを続けていた韓国の方々の努力が、地下鉄やショッピングモールに置かれた乗客救護用品収納箱(火災用マスクや、酸素ボンベ、水、救命タオルなどが入っている)などの普及に繋がっているんだなと思いました。

この火災では、乗客の多くが煙が充満する車内の中で口や鼻を押さえながらも、座席に座ったまま逃げずに留まっている様子が報告され、非常時における人々の行動に「正常性バイアス」が関係していることが知られるキッカケになりました。災害時に「正常性バイアス」を克服する事の大切さを今も伝えています。

Stock-Stockは、災害時の人間のバイアスやヒューリスクティクスを抑える研究を行っており「行動科学の手法を用いた望ましい行動をとれるよう人を後押しするアプローチ」であるナッジの考え方を取り入れて、「防災備蓄を探すことなく、すぐに使える」ようにしています。

日韓両国の地下鉄道の火災対策設備に与えた影響が大きことはもちろん、この教訓を活かし伝え続けることが大切なのではないかと感じました。(伊藤)

日本(東京)からの行き方

SRT(京釜線)東大邱駅

成田・大阪・福岡から飛行機で大邱国際空港へ行く方法もありますが、今回は成田国際空港から金海国際空港を経由して、釜山駅からSRT(京釜線)を使って大邸へ行きました。

釜山駅からSRTで片道約45分ほどで東大邸駅へ。東大邸駅から1号線で中央路駅へと向かいます。3番出口近くの改札近くに“追悼空間“があります。

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